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金米糖の夢

金米糖は
夢みてた。

春の田舎の
お菓子屋の
硝子のびんで
夢みてた。

硝子の舟で
海超えて
海のあなたの
大ぞらの
お星になった
夢みてた。

「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)

〈デザイン解説〉

甘くてかわいい砂糖菓子、金米糖。
この詩をモチーフにした3作目となるデザインです。今作はテラリウムのようなガラスの容器に入った金米糖を描きました。淡く優しい色で面を作り、色を重ね、どこまでも夢見心地なシュガートーンで全体を構成しました。面と面を星座モチーフで繋ぎ合わせ、1つの小さなテラリウムの世界がまるで万華鏡のように、無限に大きく広がっていく様子を表現しました。
かわいい金米糖はみすゞさん自身、小さなテラリウムは彼女が生きた苦しい時代、そこから広い世界へと金米糖は「夜空の星を夢見るように」コロコロと溢れ出して行きます。ファンタジーに満ちた表の世界と、どこか切なさや寂しさを感じる反対側の世界、その違和感が読み手の心に引っ掛かり、忘れられなくなるのがみすゞさんの詩なのです。
可愛く甘いモチーフを使っていますが、全体を見た印象は幾何柄のようで、甘さとシャープさが両方ある、この詩のような空気感を感じてもらえれば、と描きました。