お宮の太鼓は鳴ったけど、
花のおめめはまだ眠い。
しらしら明けの靄のなか、
とおくひびいて、近く来て、
だんだん消える轍の音を、
花はうつつにきいている。
夢にまじって、その音は、
とおい、とおい、見知らぬ里へ、
花のこころをのせてゆく。
名なしの草の花たちは、
きのうの埃、今朝の露、
のせたまんまで、みちのはた、
うつらうつらと夢みてる。
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あけがたの花/みずいろ
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あけがたの花/しろすみれ
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あけがたの花/るりこん
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あけがたの花/さんご
あけがたの花
「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)
〈デザイン解説〉
朝もやの中、植物たちが朝露に濡れる様子を想像します。下向きに、控えめに、花を咲かせるホタルブクロ(釣鐘草)はうつらうつらと眠そうに見えます。
名無しの草の花たちを小さな鈴のような花を咲かせる蔓植物で繋いで「あけがたの花」の静かな情景を描いて見ました。後でこの可愛い蔓植物の名前を調べたらなんと「ヘクソカズラ」!!こんな愛らしい姿なのになんて名前なんでしょう。。。