ひるまは牛がそこにいて、
草原をたべていたところ。
夜ふけて、
月のひかりがあるいてる。
月のひかりのさわるとき、
草はすっとまた伸びる。
あしたも御馳走してやろと。
ひるま子供がそこにいて、
お花をつんでいたところ。
夜ふけて、
天使がひとりあるいてる。
天使の足のふむところ、
かわりの花がまたひらく、
あしたも子供に見せようと。
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草原の夜/すみいろ
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草原の夜/はとばねず
草原の夜
「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)
〈デザイン解説〉
詩の冒頭、草原の草は、牛に食べられてしまったり、子供たちに摘み取られてしまったり、草にとっては搾取されるばかりです。
でも、夜になり、美しい月の光に照らされると、昼間の出来事を忘れ、次の日もご馳走してやろう、かわいい花を摘んでもらおうと、天使の魔法にかかったように、
また、すっと伸びる草。
「無償の愛」、この詩からそんなメッセージが伝わってきます。
他者を思いやり、自分の役割をすべき事だけをしていて、その結果、みんなの役に立っている、日常忘れがちで当たり前の事を改めて思い返させてくれる、
優しくて、強くて、とても素敵な詩。
詩から感じられるムードは、おとぎ話のようなロマンチックな静かな世界。
月の光に照らされ、少し秋の気配が感じられる(実際の草原は春なのですが....)
情緒的な雰囲気に仕上げてみました。スプーンやフォークを描き込み、美味しそうなイメージに、牛や小鳥、虫、細長い葉っぱ、ギザギザの葉っぱ、小さな花や実、多種多様な生き物が、静かな光に照らされ、共存している、そんな世界を表現してみました。