とてもりこうな桜んぼ、
ある日、葉かげて考える。
待てよ、私はまだ青い、
行儀の悪い鳥の子が、
つつきゃ、ぼんぼが痛くなる、
かくれてるのが親切だ。
そこで、かくれた、葉の裏だ、
鳥も見ないが、お日さまも、
みつけないから、染め残す。
やがて熟れたが、桜んぼ、
またも葉かげて考える。
待てよ、私を育てたは、
あの年をとったお百姓だ、
鳥にとられちゃなるまいぞ。
そこで、お百姓、籠もって、
取りにきたのに、桜んぼ、
かくれてたので採り残す。
やがて子供が二人来た、
そこでまたまた考える。
待てよ、子供は二人いる、
それに私はただ一つ、
けんかさせてはなるまいぞ、
落ちない事が親切だ。
そこで、落ちたは夜夜中、
黒い大きな靴が来て、
りこうな桜んぼを踏みつけた。
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りこうな桜んぼ/ももいろ
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りこうな桜んぼ/せいじいろ
りこうな桜んぼ
「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)
〈デザイン解説〉
桜んぼをモチーフにしたとても可愛い詩。
「桜んぼが思うこと」を考え、争わない方法を提案しているところに、はっとさせられ、みすゞさんらしいメッセージが伝わってきます。
まわりを思いやり、ある日、力尽き、木から落ちて、無常にも踏みつけられてしまう一粒の桜んぼ。人生の不条理のようにも思えますが、この桜んぼは、子どもも鳥も、みんながケンカをしない方法を知っている、それが「りこう」なのだという事を読み取ることが出来ます。
私たちは、結果や成果を常に求めがちで、それが当然だという考え方が、他者への思いのやりない自己中心的な行動に繋がっているのかもしれません。
デザインでは、1つの真っ赤に熟した赤い桜んぼを中心に、
みんながケンカしないよう、その周りにたくさんの桜んぼを描きました。
「ももいろ」の配色は、グレーの小鳥があんこ、その横に葉っぱがあるので桜もちみたい。
「せいじいろ」の配色は、クリーム色の小鳥はバニラアイス、背景のチェリーはソーダ水、
小さなチェリーは炭酸の泡、クリームソーダみたい。どちらも美味しそうなデザインに仕上がりました。