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さくらの木

もしも、母さんが叱らなきゃ、
咲いたさくらのあの枝へ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

一番目の枝までのぼったら、
町がかすみのなかにみえ、
お伽のくにのようでしょう。

三番目の枝に腰かけて、
お花のなかにつつまれりゃ、
私がお花の姫さまで、
ふしぎな灰でもふりまいて、
咲かせたような、気がしましょう。

もしも誰かがみつけなきゃ、
ちょいとのぼってみたいのよ。

「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)

〈デザイン解説〉

グレイッシュな淡いピンクで全体のトーンを抑えました。
それは「姫様がふしぎな灰をふりまいた」から。霞がかった背景には桜の葉っぱが見え隠れするように構成しました。桜の花びらはハートの形をしています。
そんなハート型の愛らしい花びらをふんわりと散らしました。