泣いじゃくり
するたびに、
橙の花のにおいがして来ます。
いつからか、
すねてるに、
誰も探しに来てくれず、
壁の穴から
つづいてる、
蟻をみるのも飽きました。
壁のなか、
倉のなか、
誰かの笑う声がして、
思い出しては泣いじゃくる、
そのたびに、
橙の、花のにおいがして来ます。
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橙の花/だいだい
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橙の花/すみ
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橙の花/ももいろ
橙の花
「金子みすゞ 童謡全集」(JULA 出版局)
〈デザイン解説〉
山口県の方言で夏みかんを「橙」と呼ぶそうです。みすゞさんの故郷でも多く栽培されていて、馴染み深いもの
だったようです。丸い橙色の夏みかんをドット柄のように配置、花や葉っぱ、星のような形のみかんのヘタを
デザインしました。グレーの点々は「壁の穴から続いている蟻」の行列を表現しました。夏みかんの花はとても
いい匂いがするので、みすゞさんもきっとこの匂いにはたくさんの思い出があるんでしょうね。